グルーヴハウス(Groove House)とは
グルーヴハウス(Groove House)は、爆発的なEDMムーブメントの後に発生したジャンルの一つです。その名のとおりグルーヴ感を重視したジャンルで、リズムに乗って踊るのが楽しいです。
グルーヴハウスを理解するには、まずジャンルの大元となったハウスミュージック(House music)について知る必要があります。ハウスミュージックとは、1970年後半にアメリカのシカゴで誕生したクラブミュージックのジャンルの一つ。略してハウス(House)と呼ぶことがほとんどです。
ハウスは、ダンスミュージックの典型的なリズムパターンである4つ打ちを土台に、ディスコやソウルミュージックなどの楽曲に影響された音楽です。4つ打ちとは、一小節中に4回等間隔にバスドラムを配置するリズムパターンのことです。
ハウスは誕生してから長い時間が経ち、派生ジャンルも数多く誕生しました。似たようなジャンルも数多くあり、中々イメージの付きづらいジャンルでもあります。
プログレッシブハウス(Progressive house)とは
本記事で解説するグルーヴハウスを理解するには、ハウスの中でもプログレッシブハウス(Progressive house)について理解すると分かりやすいかと思います。
プログレッシブ(Progressive)は、進歩的、革新的、前衛的といった日本語に訳せます。その名の通り、従来のハウスよりも更に一歩進んだものを作ろうというスタイルから、プログレッシブという単語が付けられています。
現在EDMフェスなどでプログレッシブハウスと銘打って流されるハウスにはいくつかの特徴があります。高音のきらびやかなシンセ、やや複雑なコード進行、パンチのあるドラム、深いリバーブや広がりのあるサウンドで作られる音像などです。
「The Veldt」
【タイトル】deadmau5 feat. Chris James – The Veldt (Music Video)
プログレッシブハウスの代表的なミュージシャン、deadmau5(デッドマウス)による一曲。こちらの曲を聞いていただければ、なんとなくプログレッシブハウスがどういうものなのかをイメージできると思います。特にシンセのサウンドの感じがまさにプログレッシヴハウスといった感じです。
プログレッシブと名付けられていますが、現在のものは誕生初期とは違い、多くの曲は似たような要素によって構成され、おおよそ前進的とは言えないポップな音楽になっており親しみやすいです。
EDMの影響を受けたハウスミュージック
さて、なぜプログレッシヴハウスについて説明したかというと、グルーヴハウスはプログレッシヴハウスの延長線上にあるジャンルと言っても過言ではないからです。EDMムーブメントの後に発生したグルーヴハウスですが、そのEDMムーブメントの渦中にあったのがプログレッシブハウスです。
プログレッシヴハウスはもちろん、ビッグルーム(Big Room)などのその他のEDMミュージックからの影響も匂わせます。
近年注目を集めている
プログレッシヴハウスやビッグルームなどの従来のEDMミュージックに比べ、新興のジャンルであるグルーヴハウスは様々なアーティストやリスナーから注目を集めています。2020年代以降も新たな波が訪れるかもしれません。
グルーヴハウス(Groove House)の特徴
グルーヴハウスの特徴といえば、やはりグルーヴを全面に押し出した曲調でしょう。弾むようなグルーヴ感を多くの曲で感じることが出来ます。思わず腰が動き出すような曲ばかりです。
具体的な特徴の一つとして挙げられるのが、そのゴリゴリなベースラインでしょうか。
【タイトル】【DAW】Groove House系ゴリゴリBassの作り方【Tutorial】
この動画は日本人アーティストのMKによる、グルーヴハウスのベースの作り方を解説している動画になっており、非常にベースのゴリゴリ感がわかりやすいです。また、楽曲制作の参考に本記事を訪れた方は必見でしょう。
その他には、プログレッシヴハウスに比べタイトな仕上がりになっていることや、民族系のサウンドを活かした曲が多いことが特徴として挙げられるでしょうか。
比較的新しいジャンルということもあり、分かりづらい部分や曖昧な部分もありますが、グルーヴ感があってノリノリになれる楽しいジャンルです。
欧州を中心に広まっている
グルーヴハウスは、音楽産業大国でありEDMの勢いも凄まじいアメリカより、ヨーロッパで流行っているジャンルです。代表的なアーティストもヨーロッパやオーストラリア出身のDJが大半を占めます。
軽いテンポでクセが少ない
音圧は強烈ですが、複雑な構成もあまり見られず、すんなりリズムに乗ることができます。民族系的なアプローチの強い楽曲は多少の癖がありますが、難しいことは忘れて弾むグルーヴに乗りましょう。
グルーヴハウス(Groove House)の人気アーティスト、定番曲
ここまでで、グルーヴハウスがどのようなジャンルなのかはある程度理解して頂けたかと思います。
次に、グルーヴハウスの代表的なアーティストや定番の曲についてご紹介しますので、さらにグルーヴハウスについて詳しくなってみてください。
グルーヴハウス(Groove House)の人気アーティスト
Kryder(クライダー)
Kryder(クライダー)は、イギリスのロンドン出身プロデューサー。グルーヴハウスで数々のヒット曲を生み出してきた、グルーヴハウスの代表的なプロデューサー。
11歳の頃、友人の兄の影響でFantasia(ファンタジア)やDreamscape(ドリームスケイプ)といったエレクトロニックミュージックを聞き始めます。その後、Carl Cox(カール・コックス)やThe Prodigy(ザ・プロディジー)を始めとする、テクノやビッグビートなどの音楽に影響され、15歳からスタジオでプロデュースを手掛けるように。
2011年にリリースしたデビュートラック、「K2」がTiesto(ティエスト)などの大物EDMプロデューサーの目に留まり、彼の知名度は飛躍的に上昇しました。
「K2」
【タイトル】Kryder – K2 (Original Mix)
サイバーなサウンドとハウスが組み合わさったこの楽曲は様々な方面から絶賛を得ることが出来ました。その後、数々のレーベルやアーティストと交流していき、グルーヴハウスの牽引者として活躍していきます。
実はKryder、活動当初は二人組で活動していました。活動当初は骸骨のマスクを被った背の低い謎の男とユニットを組んでおり、Kryder自身も未来から来た謎のアーティストという設定がありました。
骸骨のマスクを被った男はステージで客を煽る役割を持っていました。いつからかKryder一人での活動になり、未来から来た設定も消えてしまったそうです。
また、彼はSosumi Recordsというレーベルを持っており、無料で良質なグルーヴハウスが楽しめますので是非チェックしてみてください。浮世絵を始めとした日本的なテイストがアートワークに使われているのも興味深いです。Sosumi Records
THIRD PARTY(サード・パーティー)
THIRD PARTY(サード・パーティー)は、Jonnie Macaire(ジョニー・マケアー)とHarry Bass(ハリー・ベース)によるイギリスのロンドンを拠点に活動するDJユニット。
音楽について学べる大学に入学した2人は意気投合し、トラック作りに勤しみます。その作品は周囲の学生や教師のみならず、ネットを通して徐々に評価を獲得していきます。その名がSteve Angello(スティーヴ・アンジェロ)という有名DJまで届くと、彼のレーベルと契約しリリースした楽曲がヒットしました。
「Release」
【タイトル】’Release’ – Third Party
彼ら自身も強い思い入れがあると話す代表曲の一つ。その後も様々な有名アーティストとのコラボなどで知名度を上げていき、世界的に活躍するDJユニットとなりました。
一般的にはプログレッシブハウスをプレイするDJとして知られますが、パワフルでリズミカルなグルーヴハウスも制作しています。
また、THIRD PARTYの正しい表記は「Third ≡ Party」です。この「≡」マークは彼らのトレードマークで、彼らも「≡」マークのタトゥーを体に刻んでいます。
WILL K(ウィル・ケー)
WILL K(ウィル・ケー)は、オーストラリア出身のプロデューサー。15歳の時にミュージシャンとしてのキャリアをスタートし、スタジオでのトラックメイクの経験を重ね、現在ではグルーヴハウスシーンで注目の的となっているのが彼です。
WIIL Kのもう一つの特徴として、民族系の楽器や声ネタ、旋律が使われるハウスのサブジャンル、Tribal House(トライバルハウス)においても活躍するアーティストです。
Animal Pop
【タイトル】WILL K – Animal Pop (Official Audio)
トライバルハウスからの影響を感じさせる野性味のあるサウンドですが、全体的に独特なテイストに仕上がっている楽曲です。キャッチーで耳に残ります。
WILL Kはその人気から、Axtone Records、Size Records、Fonk Recordings、Heldeep Recordsなど、多数の名門レーベルから楽曲をリリースすることに成功しています。これからの活躍にも目が離せないです。
グルーヴハウス(Groove House)の定番曲
「Jericho」
【タイトル】Kryder & Tom Staar – Jericho [SIZE RECORDS]
グルーヴハウスの代表的なアーティストであるKryderと、彼の盟友であるハウスミュージックプロデューサー、Tom Staar(トム・スター)による一曲。アグレッシブなベースとパーカッションの絡みがグルーヴィーです。メロディーの展開も気持ちいいです。
KryderとTom Staarは何度も共作をする他、Cartel RecordsというレーベルをSpinnin Recordsというレーベルの傘下にて設立しています。ラテンハウスやグルーヴを重視したエレクトロニックミュージックなどをリリースしています。
「De Puta Madre (Extended Mix)」
【タイトル】Kryder, Tom Staar & The Wulf – De Puta Madre (Extended Mix)
こちらもKryderとTom Staarによるハウスチェーン。グルーヴハウスは民族的な楽器や旋律との相性がいいジャンルですが、この曲ではラテンのエッセンスが加えられていてサイケデリックです。
IDMAs(International Dance Music Awards)という、ダンスミュージックにおいて権威ある賞を、2016年に最優秀ラテンダンストラックとして受賞しています。
「Fiji」
【タイトル】Kryder – Fiji (Original Mix)
曲名のとおりですが、太平洋に浮かぶ島国フィジーをコンセプトに作られた楽曲。ゴリゴリなベースの単調なメロディが、どこまでも続く広い海を思い起こさせるような楽曲です。ボーカルサンプルも民族的、神秘的で楽曲の世界観を確固たるものに仕上げています。
「Feels Like Summer」
【タイトル】Kryder & Still Young ft. Duane Harden – Feels Like Summer (Original Mix)
カナダの二人組DJ、Still Young(スティル・ヤング)との共作。この曲の非常に印象的なポイントはスラップベース。スラップベースとは、親指で弦を叩くサムピングと、弦を引っ張り指板に打ち付けるプリングといった奏法を使って、打楽器のようなサウンドを出すベース。
ギラギラでファンキーなサウンドが、この楽曲をよりグルーヴィーになものにしています。
「Real Sound」
【タイトル】Third Party and Sentinel – Real Sound
プログレッシブハウスのDJとしても有名なTHIRD PARTYですが、パワフルなグルーヴハウスも得意ジャンルです。この曲をプレイされたら思わずテンションが上ってしまいます。中盤の変則的な展開もカッコいいです。
「Tasty (feat. Thayana Valle)」
WILL K – Tasty (feat. Thayana Valle)
グルーヴハウス界を賑わすアーティストの一人、WILL Kによるグルーヴィーな一曲。どこかアンニュイなボーカルが踊りの世界へ誘うようです。何よりドロップの気持ちよさがたまらないです。WILL Kの天才的な才能を感じさせられます。
※ドロップ : 一般的に楽曲のサビに当たる部分。
「Café Leche」
【タイトル】WILL K – Café Leche
WILL Kが心の底から尊敬するプロデューサーであり、アイドルとまで崇めるAxwell(アクスウェル)が主催するレーベル、Axtoneからリリースされた一曲。自身のターニングポイントだと話す楽曲で、このリリースをきっかけに多数のレーベルからオファーを貰ったそうです。
WILL Kお得意の民族的なサウンドが随所に散りばめられ、怪しい雰囲気が漂う名曲。
「Saxo」
【タイトル】Thomas Newson & WILL K – Saxo
オランダ出身プロデューサーのThomas Newson(トーマス・ニューソン)とWILL Kがコラボした楽曲。超人気DJのHardwell(ハードウェル)が絶大な信頼を置く人物で、父親もMarco V(マルコ・ブイ)というレジェンドDJです。
この曲は、WILL Kが自分の中で一番印象の強いトラックと話す楽曲で、彼いわくどのタイミングでプレイしても盛り上がるパワーがあるそうです。
「House Every Weekend」
【タイトル】David Zowie – House Every Weekend (Official Video)
David Zowie(デイビット・ゾウイー)は、イギリスで活躍するDJ。この曲は2015年にリリースされ、イギリスのシングルチャートで一位を獲得した大ヒット曲です。People Underground(ピープル・アンダーグラウンド)のMusic Is Pumpingという曲をサンプリングしています。
スタイリッシュかつ、アングラ感のあるダンスが繰り広げられるミュージックビデオも必見です。
「The Beat Goes On」
【タイトル】Bob Sinclar – The Beat Goes On (Official Video)
Bob Sinclar(ボブ・サンクラー)は、サッカーが大好きなフランスのプロデューサー。幼少期よりブラックミュージックを好んでいて、楽曲にはその影響が多く見られます。また、彼の性格を日本語で表すならばチャラ男といったところ。
この楽曲はヨーロッパ中でヒットした彼の代表曲の一つ。ソウルミュージックからの影響を感じます。
まとめ
今回はEDMに続く勢いのあるジャンル、Groove House(グルーヴハウス)をご紹介しました。まだまだプロデューサーやリスナーも少なく情報の少ないジャンルなので、是非本記事を参考にしてください。
2019年現在はKryder(クライダー)やTHIRD PARTY(サード・パーティー)が人気を集めていますが、これからどんなアーティストがムーブメントを起こすのか誰にも想像がつきません。
次にEDMの王者になるのはグルーヴハウスかもしれません。是非チェックしてみてください。